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師恩(十)

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久しぶりの師恩です。

山口五郎先生は、「神様」「仏様」とこの業界の方々に評されていました。
僕もそう思っています。

しかし反面、この師恩シリーズでも書いたと思いますが、実は僕にとっては非常に「恐い」存在でしたし、生々しく「人間」を感じる人でもありました。

内容は伏せますが、ある演奏会がありました。山口門人も数名出演し演奏するという、山口五郎ウィズ、というような演奏会。

門人序列の、上から順にお声掛けがあり出演することに。実は僕は全くその演奏会のことを知りませんでしたし声もかけられませんでした。ですが、その演奏会の数日前、先生から「裏方を手伝ってくれないかなぁ。」と申し渡されたので、もちろんどんな予定があろうと、裏方であろうと手伝わないわけはありません。

演奏会当日。 
・・・「??」

僕よりもずっと序列の下の人が出演していて、「あれ?」と思ったのですが、そのことを先生も気にして、ばつが悪そうにかなり苦労して僕に言い訳をされました。なるほど、と僕には事情が分かりましたので、「別に良いですよ、気にしてません」と言いたかったのですが。。。 
ああ、やっぱり先生も人間だなぁ、とつくづく感じ入った場面でした。

で、話の核心はここから。

演奏会場では自分の演奏があると思うと、コンディション作りに夢中になり、ものが見えません。
先生とご一緒させていただく時などは、生々しい「音」に触れられるチャンスなのになかなかそれが出来ずにいました。

その時の演奏会では舞台裏の進行を任され、それきりの仕事でしたのでいろいろと客観的に「音」に気を配ることが出来ました。

こちらの楽屋では先輩方が音出しをしてコンディションを整えています。その「音」、自分なりにあれこれと思うこと、いろいろ。
片や「今日は調子が悪いんだ。」とおっしゃって、いつもより入念に別の個室で音出しをされている先生。

楽屋の外の廊下にいた僕にはその双方が聞こえ、「えっ!!!??」と思うほど愕然と。

「異質の音」。

先輩方には申し訳ありませんが、全く「音」が違いました。
その響き、輝き、豊かさ。
これほどまでに違うものかと、耳にこびりついて未だに離れません。
ものすごく貴重な経験でした。

もちろん人間の出来ていない僕。その時は多少「こんちくしょう!」と思いましたが、格好をつけるわけではないのですが、先生はその「音」の違いを僕に感じさせるために、あのような場面を作ってくださったのかな、なんて今では美化して考えてます。

それほどまでに「音」の違いに愕然とさせられた一幕でした。


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